【前編】感情と慢性痛ー感情から紐解く痛みのお話ー
- サラミック・ガール
- 2023年2月7日
- 読了時間: 8分
更新日:2023年5月7日
痛みと感情が関係していること

みなさんは"Mind-body"という言葉を知っていますか?
Mind-body とは一言でいうと「心と体がつながっていること」を指します。このような表現はよく耳にすることはあると思いますが、少しピンときませんよね。ここで一つ例をあげてみましょう。
みなさんは会社のプレゼン前やテスト当日など緊張したときに、体にどのような反応がでますか?人によっては鼓動が早くなったり、口が渇いたり、おへそのあたりがムズムズしたり...。
このように私たちは緊張をすることで、体にもその影響がでてきます。普段から瞑想をしている人は「感情の移り変わり」を知っていますが、ストレスを感じているその瞬間も体には何らかの反応がでています。
例えば緊張するときと同様に口が渇いたり、呼吸が浅くなったり、体に力が入ったりなど人によって反応は様々です。このように私たちの心 ー感情の変化ー は体にも影響が及ぶということです。 なぜこのような話をしたかというと、慢性痛に対しても同じことが言えるからです。
慢性的なストレス・不安というのは、痛みを強くするだけでなく、私たちがさらに痛みを感じやすい状態にしてしまいます。
実際に慢性痛と鬱は密接な関係にあり、慢性痛持ちの50%が鬱を発症する傾向があり、逆に鬱病を患う3分の2 が慢性痛に苦しんでいると報告されています。 では私たちに出来ることはあるのでしょうか?
ストレスを感じない、不安から目を背けることは一見楽に思えるかもしれませんが、多くの人がやりがちなこの方法は、逆に痛みを悪化させてしまいます。
むしろストレスや不安を感じることは自然だと受け入れ、その感情をどう対処するかが重要になってきます。ここではまず対処方を学ぶ前に、それぞれの感情がどのように私たちの体に影響を与えるのかを理解していきましょう。次回の【後編】では怒り、なぜ私たちには感情が必要なのか、感情との上手な付き合い方を紹介していきます。
▼後編はこちらから
では、私たちが普段見逃しがちな「感情」について勉強していきましょう。
一次的・二次的苦痛
なぜ慢性痛の人は常に痛みを感じ続けてしまうのか?それは「二次的苦痛」が関係しています。私たちが経験する痛みそのものを「一次的苦痛」と呼びます。
一方で、この一次的苦痛から生まれるネガティブな感情により起こるさらなる痛みを二次的苦痛と呼びます。長年慢性痛に悩まされている人にとって痛みを感じるときに繰り返される感情や思考があります。
「また痛くなってきた。これじゃ仕事ができない...。締め切り近いのに...。」「ずっとこのままなのかな...。」「この痛みのせいで、趣味に費やしたり友人と会う時間が減った」などなど、人によって痛みを感じたときに湧き上がる感情や思考は異なり、大抵このような負の感情が痛みをさらに悪化させます。
ではこのような二次的苦痛、不安、ストレス、過去のトラウマがなぜ痛みを悪化させるのかみていきましょう。
ストレスと痛み

私たちがストレスを感じるとき、体では何が起きているのでしょうか?実はストレスは私たちの免疫系ととても深く関わっています。
まず私たちがストレスを感じると、コレステロールと呼ばれるストレスホルモンを体内に放出し、免疫系の働きを低下させます。
免疫系とは私たちの体がウイルスや細菌など外敵から身を守るために備わっている機能で、この機能が低下してしまうと、当然ですが体調を崩しやすくなったり、気分が落ち込んでしまいます。これによって痛みが悪化してしまいます。
ストレス反応のもう一つは、炎症性サイトカインと呼ばれる体内に炎症を引き起こす物質と、神経ペプチドと呼ばれる脳内化学物質が放出され、今度は逆に免疫系を活性化させます。
一見こう聞くと、「活性化って良いことじゃないの?」と思いますが、活性化しすぎると逆に痛みを悪化させてしまします。炎症性サイトカイン・神経ペプチドは神経系を敏感にさせることでウイルスなどの外敵に対してより早く反応するようになります。
こうなると脳は警戒モード ー痛みをより簡単に作り出す状態ー に入ってしまい、これが痛みを悪化させる原因になります。
ここで注意してほしいのが、ストレス自体は私たちが有意義な人生を送るためには必要不可欠なものです。
一概に「ストレスは悪」と言っているのではなく、慢性的なストレスや不安を常に感じていると体内が炎症を起こし、これが痛みを悪化させる原因になります。
これを防ぐためには、ストレスに対しての私たちの考え方を変えなくてはいけません。ストレスは考え方によっては私たちを成長させる素晴らしいツールの1つになりますが、ストレス自体を避けようとしてしまうと、問題は山積みになり常に慢性的なストレスや不安に苛まれてしまいます。
▼こちらはストレスとの上手な付き合い方が学べる本です。個人的にとてもおすすめです。
エクササイズ
ではここでエクササイズに取り組んでみましょう。みなさんはストレスを感じたとき、どのような反応を起こしやすいですか?そしてそのストレスをどのように対処していますか?5分間タイマーをセットして、良い例、悪い例両方を思いつく限り書いてみましょう。以下は代表的な例です。
ストレスを感じたときの反応 口が渇く、鼓動が早くなる、筋肉が硬直する、胸/お腹がむずむずする、頭がふらふらする、汗をかく、疲労感が増す、腹痛/頭痛がする、寝付きが悪くなる、顎に力がはいる、集中するのが困難になるetc.
対処法 悪い例 家族や恋人などの親しい人に当たってしまう、友人との約束を断る、怒鳴ってしまう、過度に飲食/飲酒をする、家に引きこもる、ジャンクフード/お菓子を食べ過ぎる、趣味の活動を減らすetc.
対処法 良い例 ジョギングにいく、、運動をする、友人に話す、趣味に打ち込む、料理をする、絵を描く、好きな映画を観る、本を読む、自然に触れるetc.
トラウマと痛み
サリーは長年幼少期に経験したトラウマで苦しんでいました。人混みにいると息が詰まること、異性との恋愛関係が長く続かないこと、異性の視線が必要以上に気になること。
彼女を苦しめるものはもう一つありました。それは長年の頭痛です。彼女はある時から慢性的な頭痛をもつようになり、それはより一層彼女を社交的な場所から避け、仕事も休みがちになり、経済的な面でも彼女を苦しめました。 一見何も関連性がない過去のトラウマと慢性痛。なぜこのような過去のトラウマが痛みを悪化させるか、これには理由があります。さきほど説明したストレスに深い関係があります。
私たちがトラウマのような強いストレスを経験すると、私たちの体はそのストレス反応を覚え、神経系を敏感にすることで同じ目に合わないように警戒モードに入ります。
これは心理学では闘争/逃走反応と呼びます。我々の先祖はこの警戒モードを利用することで、天敵が現れたときに、闘う(闘争)・逃げる(逃走)ことにより生存してきました。

通常この警戒モードがオンになるのはとても短い時間で、数年あるいは数十年も続くことはありません。しかしこの状態が長年続いてしまうと、逆に私たちの脳は常に警戒モードになり、ちょっとしたことでも脳が敏感に反応してしまいます。
サリーのように幼少期のトラウマを経験した女性が他人対して険悪感を抱いてしまうのは、彼女の幼少期のトラウマによる神経系の過敏化に関係します。
なぜなら彼女の体は神経系を敏感にさせることで、過去の悲劇が二度と起こらないように彼女を守ろうとしているのです。
このように幼少期/成人期のトラウマ体験により普段の生活に支障がでてしまうことを、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼びます。
実は慢性痛の世界では、PTSDと慢性痛は強く関係していると言われています。つまりトラウマで脳が敏感になってしまった人は、その分痛みも普通の人よりも感じやすくなっているのではということです。
なぜなら「痛み」というものは、脳が私たちの身を守るために作り出すからです。
PTSDはそう簡単に治せるものではありません。まずは以下の5つの質問に答えて、今のあなたの状況をチェックしてみましょう。
あなたはこれまでにトラウマを経験したことはありますか?
このようなトラウマについて考えると、あなたは身体的・精神的にどのように感じますか?
未解決のトラウマが、あなたの痛みに関係していると思いますか?
あなたの痛みが発症した当時、あなたの人生に何が起きていましたか?
これらの出来事について何かトラウマになるような部分、またはトラウマ的な思い出と関係していますか?
これらの質問に当てはまる、または以前から自覚がある人は、臨床心理士などの専門家に診てもらうことを強くおすすめします。
先ほども書きましたが、PTSDと慢性痛には深い関係があります。そう簡単に解決することではありませんが、少しずつ その出来事を対峙することで、将来大きな変化が得られることは間違いありません。
こちらはトラウマについて、私が実際に読んで良かった本です。こちらも参考にしてみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は感情から痛みを解説してみました。何度も言うように、痛みの対しての知識を身につけることは、慢性痛を治していくためには重要なステップです。
いくら運動や心理的介入を受けても、痛みがどのように働いているのかを理解しない限りは、思うような結果はでません。
次回は【後編】となり、怒り、なぜ私たちには感情が必要なのか、感情との正しい向き合い方はあるのかについて書きます。根気強く、私と一緒に痛みについて、慢性痛について勉強していきましょう。



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