【後編】感情と慢性痛ー感情から紐解く痛みのお話ー
- サラミック・ガール
- 2023年2月7日
- 読了時間: 7分
更新日:2023年5月7日
怒りと痛み

ここでは特に痛みに対して湧き起こる「怒り」についてお話します。あなたは長年感じている痛みによって止めてしまった、あるいは減ってしまった活動はありますか?当時痛みがピークに達していた私は、友人と合う回数が断然減りました。
人によっては「今まで楽しんでいた趣味ができない」「痛みのせいで、毎年恒例のマラソン大会に出場できなくなった」「眠れなくて辛い」「会社を休みがちになり、給料が減った」「運動する機会が減り、体重が増えた」など、「痛みのせいで〇〇ができなくなった」ということは様々です。
結果的に私たちは痛みを感じるたびに、無力感に苛まれ強い怒りを覚えます。怒りは特定の筋肉を硬直させるため、これによりさらに痛みが悪化してしまいます。
長年慢性痛に悩まされてきた多くの人が、このような感情を抱きます。しかしこれはとても自然なことです。人は誰でも、今まで出来ていたことが出来なくなるのはストレスだし、さらに何をしても良くならない痛みに対して、無力感すら覚えます。
様々な研究から報告されていますが、慢性痛を発症しやすい人は「完璧主義者」である傾向が強いことがあります。こういう人たちは普段から身の回りに起きる問題に対して、全力で解決しようとします。これは素晴らしいことでもあるのですが、慢性痛で悩む多くの人が、これによって”ドクターショッピング”と呼ばれる沼にはまってしまいます。
「何度も検査をしたけど原因が見つからない。きっとあの医者は何かを見落としているに違いないから、他の医者に見てもらおう」と思いますが、結局どこの医者をあたっても言われることは同じということです。
このように、原因がみつからないという怒りはさらに痛みを悪化させてしまうのです。
しかし実は、慢性痛の原因の多くが身体的損傷からではないという報告が、多くの研究から報告されています。むしろ感情への向き合い方や生活習慣が原因なものが多いのです。
痛みと回避

前回、闘争/逃走反応についてお話しました。実はもう一つ「凍結反応」と呼ばれるものがあります。これは読んで字の如く、体を固めることです。私たちの先祖は闘ったり・逃げたりする他にも、死んだふりをすることで天敵から身を守ってきました。
現代社会に生きる私たちにもこの機能は備わっており、例えば過度なストレスや不安にさらされると家にこもったり、ベッドやソファの上で一日中ダラダラしたりします。一日ぐらいであれば良いかもしれませんが、1週間の大半をこのように過ごしてしまうと、体に悪い影響が起きます。
私たちの体が本来必要としている活動量をこなさないと、当然筋力が落ち、免疫系が低下していきます。前回でもお話しましたが、免疫系の低下は風邪や体調不良を招き、その結果痛みは悪化してしまいます。
そもそも感情って何で存在するの?
前回に引き続き、今回も感情について話していますが、そもそも感情はなぜあるのでしょうか?現代社会ではストレス・不安などは悪者として扱われ、より一層私たちは自分たちの感情と切り離されています。
ではなぜ私たちには泣いたり、笑ったり、怒ったり、悲しんだりなどの感情が備わっているのかを勉強してみましょう。
なぜ私たちみんなが、感情というものを共有しているのでしょうか。これには様々な理由があります。まず1つは、「感情は”私たちについて”の情報を与えてくれるから」です。こうすることで感情は私たちに行動を促し、ニーズを満たそうとします。
例えばストレスを感じるときは気分を良くすることを求めたり、怖いときは安全を求めたり、悲しいときは家族や友人の存在を求めたりなど、私たちは無意識のうちに感情によって自らの要求を満たすようにできています。
2つめは、「感情は”他者について”の情報を与えてくれるから」です。感情は自分たちだけでなく、他者が今どういう状況なのか、何を求めているのかを教えてくれます。これによって彼らだけでなく、私たち自身にも行動を促すように指示します。

例えばあなたの友人が悲しんでいたら話を聞いてあげたり、泣いている赤ちゃんをあやしたり。これも私たちが他者の感情が読み取る能力が備わっているから出来ることです。
3つめは、「感情は私たちを気づかせ、報酬を与えてくれるから」です。私たちがポジティブな経験をしたとき、脳内には気分が良くなる化学物質が生成されます。このようなポジティブな感情は、私たちに同じ行動をとるように促します。
例えば初対面の人とご飯に行きとても楽しい時間を過ごすと「もう一度会いたいな」と思いますよね。逆に嫌な思いをしたら次に会う約束はしませんよね。私たちは進化の過程で心地よいと思うもの(快)を求め、嫌なもの(不快)を避けるようにできてきたため、今挙げたような例が起きるんですよね。
私たちが生まれたときから備わっている感情という機能は、切っても切れない関係です。
では私たちは自分たちが経験する感情の奴隷にしかなれないのかというと、そうではありません。感情とうまく付き合っていくためには「感情に気づいてあげること」が大事なのです。
つまり自分が今経験している感情に気づき、受け入れるということが重要になるのです。「こんなことで本当に良くなるのか?」と疑問に思うかもしれませんが、このように考えてみましょう。
ストレスや不安を感じたときに多くの人がやりがちなことは、その感情を押し殺そうとすることです。例えば「別にこれくらい大したことない」「そういうものだから、しょうがない」「男だからくよくよするな」など、日々のストレスや不安感などから逃れようとすることです。
このようになると、私たちの感情はより多くの情報を与えることで、私たちをより不安にさせます。不安感から背をそむけばそむくほど、不安は大きくなっていく体験をしたことはありませんか?

これは私たちが感情が与える情報を無視しているから起きることで、いやがらせをする子供が無視されると余計にひどいことをしてくる光景と似ています。
あなたが考える痛みについて
次回に具体的な対処法を紹介していきますが、その前にあなたが現段階でもっている、「痛みについての考え方」を明確にしてみましょう。
紙とペンを用意していただいたら、以下の質問に正直に答えてみてください。誰かに見せることはないので、思ったことをそのまま書いてみてくださいね。
痛みがはじまった当初、あなたは痛みが起きた原因は何だと思っていましたか?
医者や他の医療関係者はあなたの痛みの原因について、あなたに何と言っていましたか?
もしあなたの痛みの原因を追求するために、あなたが診断検査を受けていたとしたら、どのような結果がでていたと思いますか?あなたはその結果を信じますか?
あなたの痛みが起きた原因についての考えが、時間が経つにつれて変わりましたか?もうそうであれば、それはどのように、なぜ変わりましたか?
あなたが普段痛みを感じる部分を心のなかで想像してください。あなたはその部分に対して、「ゆるい」「損傷している」「組織がもう古くなってる」「こすれている」「圧迫されている」「貧弱になった」「筋肉が張っている」、などのように思っていますか?もしその部位が「劣化している」と
あなたの痛みについて持っていた考え方で、一番気持ちが動揺するものはどれですか?
痛みを起こす活動を行うと、痛みが悪化してしまうと思いますか?その場合は、どのようなことがこれを思うきっかけになりましたか?
あなたはこれまでに、「これ以上痛みを感じる部位を動かさないようにしよう」と確信した経験はありますか?
あなたの友人・親戚で、痛みによって生活が制限がされている人を知っていますか?
痛みが感じる部分を休ませることはあなたの気分を良くしましたか?(特定の日だけではなく、長期間その部位を休ませた場合)
もし何かをしていて痛みが起きはじめたら、あなたはその行為をやめるべきだと思いますか?
痛みが起きたことで、いくつかの活動を永続的に制限する必要があるとあなたは思いますか?
実際に自分ができる量よりも多くのことするように周り(同僚、家族、友人)が期待していると、あなたは不安を感じますか?
まとめ
さていかがだったでしょうか。前回も含めて、感情について少しでも理解を深めることができたのではないでしょうか?こういう風に考えると、私たちが普段から感じている”感情”にも色々な意味があるんですね。最後の質問票は次回以降に役に立ってくるので、ぜひスキマ時間にやってみてください。
今回他にも感情との上手な対処法を紹介しようと思ったのですが、予想以上に量が多かったので次回に持ち越します。申し訳ないです。
ということで、次回は怒り、うつ症状などのネガティブな感情の対処法をたっぷりご紹介していきます。ついに実践編、お楽しみに!



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